金融庁の立ち入り検査を妨害するなど複数の法令違反行為があったとして行政処分を受けた日本振興銀行は２８日、再発を防ぐための業務改善計画を同庁に提出した。９月末をめどに大口融資先の状況を点検し、必要なら貸し倒れ引当金を積み増す可能性もあるという。計画提出後に記者会見した西野達也社長は行政処分の背景について「倫理意識や順法意識の欠如など、急速な業務拡大に応対する態勢が著しく脆弱（ぜいじゃく）だった」と述べた。その要因として「一部の経営指導層への過度な信頼」を挙げ、取締役会による行内の監督が不十分だったことを認めた。計画では、法令順守態勢を強化するため、独立部門としてコンプライアンス統括部を７月中旬に新設する。その状況などをチェックする内部監査部門も増強し、８月末をめどに専任の担当役員を置く。融資をする際の査定態勢も見直す。営業部門と審査部門を完全に分離し、融資審査などを適正にする方針も示した。また、６月半ばに設置した弁護士や公認会計士による特別調査委員会で、他の法令違反がないかなどを調べるのに加え、融資額１億円以上の大口融資先の経営状態や担保を点検し、９月末に報告書をまとめる方針を明らかにした。並行して、振興銀内でも大口融資の状況を９月末までに点検すると発表した。これらの点検で担保などが不十分と判断した場合、貸し倒れに備えた引当金を積み増し、９月中間決算に反映するという。経営破綻（はたん）した商工ローン大手のＳＦＣＧ（旧商工ファンド）から買い取った債権を別の信託銀行も買い取っていたという「二重譲渡」の問題も再点検する。信託銀行と裁判で所有権を争っているが、振興銀の所有権が認められなかった場合などは「引当金を適正に積んでいく」（山口博之専務）という。今後の焦点は、これらの点検が振興銀の財務基盤にどれだけ影響するかだ。引当金の積み増しが増えれば、損失が膨らみ、財務基盤を弱める恐れがある。ただ、資本増強については現時点では検討していないという一方、手元資金について、西野氏は「預金の解約が多いわけではない。十分に備えはある」と述べ、資金繰りに問題はないことを強調した。振興銀に対しては、金融庁が５月２７日、検査妨害や、実質的に融資で年４５．７％の金利を取った出資法違反など計７項目の法令違反を指摘し、大口融資などの一部業務を約４カ月間停止するよう命じた。検査妨害については刑事告発し、警視庁が６月１１日、銀行法違反の疑いで振興銀などを家宅捜索している。